障害も個性、個性は宝物。そんな思いを持つ岩手の家具製作所が活かす木の個性 [青木家具製作所:岩手県花巻市]
あたたかな木の家具。エコなイメージですが、反りや節などがありどうしても大きな家具には使えない部材が出てしまいます。岩手県花巻市の青木家具製作所では、「木にも人にも、節もシミもできる。それを捨てちゃいけない」そんな思いで、愛情込めてモノづくりを続けています。厳しくも暖かい会長の思いを伝える、青木家具製作所の市川さんにお話を伺いました。
青木家具製作所は、創業42年。現在は創業者が会長を、息子さんが社長を務め、得意な分野とモノを大切にする思いをもって事業をされています。青木家具製作所の一つの柱は、店舗等の大きな家具作り。発注を受けて作るので、図面通り、ミスのないものを作る丁寧さと高い技術が問われます。
もう一つの柱が、今回ご出展いただく南京椅子などの小さな家具や雑貨です。これは、大きい家具の端材に近いものを活用して作られています。
大きな家具を作ると、どうしても細かくなる材料があります。会長はこれらについて「何十年何百年生きてきた材料は捨ててしまわないで、息を吹き込んであげたい」と小さな雑貨づくりを始めました。ドールハウスのキットをOEMで作ったり、椅子や写真たてなどを自社製品として作ったりしています。
目を引くように元気のあるカラーをつけた南京椅子。ふるさと納税に出品した際に、目に留まるようにとカラフルに仕上げたところ、とても好評をいただいているとのこと。インテリアとして楽しいだけでなく、購入されたお客様からは、「たまに帰ってきた家族が、これは自分の椅子と呼んでいて、自分の居場所と感じている」との感想もいただいています。
天然の木なので、一つ一つ模様の出方は違いますし、あえて節があるところも使っています。「人もほくろあったりシミがあったりする。それを使えないと言うことはできない」という会長の考えがあらわされています。
市川さんのお話の中で伝わるのは、会長の人間的魅力。仕事、特に整理整頓には非常に厳しい方です。しかし、この厳しさが信頼を生んでいます。あるお客さんが来社したところ、「木工所はだいたい雑然としているところが多いけれど、おめ(=あなた)のところは整理整頓ができている。きちんとした仕事ができるのがわかる」と言われたといいます。
創業者である会長の跡を継がれた社長は若く、新しい挑戦も進められています。
店舗は、アールのカウンターや円など特殊な形が多いため、NCという機械を使って作業をします。このNCが会社に4台ありますが、この規模の設備をそろえるのは、中小企業では数少ないとのこと。地元の幼稚園保育園の下駄箱や什器を作ったり、直営店を運営したり、アグレッシブに活動しています。
従業員は、パート含め10名。10年選手も多く、市外から片道1時間をかけて通われる方もいるほど、愛されている職場です。
技術の中心となるのは、コンピュータープログラムオペレーターは二名。
木工用ミシンの高い技術力も製作所の自慢。王将の駒の置物の文字を切り抜くのは、一筆書きの要領で休まずずっと切り続けなくてはなりません。この職人さんの特性を見極めたのも会長だったそうです。
また、自閉症等の障害がある方も25年の長きにわたり勤められました。これも会長の「いつ自分の子が障害をもつか分からない」という考えでの採用でした。
会長は、このような従業員の皆さんを「宝物」とおっしゃいます。
カタルスペースを通じ、いろんな方に手に取ってもらい、目に触れてもらい買ってもらえれば、と期待されます。実際に触れ、座って、一つ一つ違う木目と椅子の表情を体感できるのはリアルだからこそ。
「木は生きているからソリがあったり、ひねくれている部分もある。木を相手に物を作るのは本当に大変な作業。そこをうまく活かし、慣らしながら作るのが大切」。そんな思いで、愛情込めて作られた青木家具製作所の南京椅子の中から、自分の個性にぴったりくる一脚を探すのも楽しみですね。
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