サバを知り尽くした会社だから作れる缶詰 八戸サバ缶バー [株式会社マルヌシ:青森県八戸市]
日本で古くから親しまれてきた「サバ缶」。近年では良質のタンパク質やEPA・DHA、カルシウムといった栄養素が簡単に摂れることが喜ばれ、トレンドフードにもなっています。
そんな中、サバ缶好きの注目を集めているのが青森県の水産メーカー「株式会社マルヌシ」が製造販売する「八戸サバ缶バー」です。今回は開発担当者の方から材料のサバについて、また美味しさとともに缶にたっぷり詰め込まれた地元・八戸への思いを伺いました。
本州最北端のサバ漁場から八戸港に揚がるサバは、以南の太平洋岸で獲れるものに比べて脂のりが圧倒的に良く、味わい深いことをご存じでしょうか?
八戸産サバのおいしさには、漁場の海水温が低いことやサバの旬と漁獲時期が重なることなどいくつもの理由があるのです。
平成20年には「八戸前沖さば」ブランド認定も始まりましたが、関サバや金華サバに比べると全国的な知名度はまだ低め。まさに「知る人ぞ知る美味」といえるでしょう。
八戸で1952年に創業した株式会社マルヌシの主力商品はサバの加工品で、全国のスーパーなどに卸しています。八戸前沖サバのハイブランド「八戸銀鯖」を用いたしめさばなども製造していますが、近年気になることがでてきたといいます。
「八戸で揚がるサバが年々小型化してきているんです。八戸のサバはサイズに関係なく脂のり抜群でとてもおいしいんですよ。それなのに小さいものは見栄えがしないという理由で安値で取引されるのはあまりにもったいなくて」
そこで小型のサバのおいしさもしっかり生かせる商品を開発したいと考えた時に候補にあがったのが「サバ缶」だったのです。
2017年から開発をスタートしましたが、八戸のサバの魅力を知り尽くした会社だけに、缶詰といえども妥協はできませんでした。
一般のサバ缶は原料確保と缶詰製造は別会社が行うことがほとんどですが、株式会社マルヌシではサバの買い付けから販売までを自社で行います。「うちは八戸魚市場の買い付け権利を持っていますから、市場で厳選した本当に良いサバだけを使ってサバ缶を作ります。目利きが納得したサバだけを仕入れるので、仕入れが可能なのは1年のうち5日くらいでしょうか」。1年のうちたった5日!?と驚いたら、「満足できるサバが仕入れられない年には無理して作らなくてもいいと思っています」ときっぱり。八戸のサバを愛するがゆえの厳しい選択です。
「八戸サバ缶バー」の開発にはもうひとつ大きな理由がありました。
株式会社マルヌシでは、八戸ならではの新しいおみやげ、八戸の人が外に誇れる郷土産品を作りたいと考えていたのです。保存性が良い缶詰ならそのニーズにも応えられます。
ただ、原料のサバには絶対の自信があるもののサバ缶としては後発なので、既存品とは異なる方向性の商品を開発しなければという思いも強かったそうです。
そこで「バーで世界のお酒が飲めるように、いろいろな味のサバ缶が選べたら楽しいのでは?」と、世界各国の料理や調味料とのコラボをコンセプトに試作を重ね、開発開始から1年後、「津軽海峡の塩」「ゆずこしょう」「グリーンカレー」「アヒージョ」「トムヤムクン」「ハバネロ」の6種類を第1弾として売り出すことに決定。八戸のデザイナーに依頼した缶詰ラベルもできあがり、オール八戸のサバ缶が誕生しました。
「個人の好みが多様化した現代、味噌煮、水煮だけではダメだと思っていましたが、カラフルな6種類の缶詰が実際にできあがってきた時は壮観でした」と開発担当者が当時を振り返ります。
2018年に青森県特産品コンクールにて「青森県知事賞」(最高賞)を受賞するなど着々と知名度を上げている八戸サバ缶バー。今後はフレーバーを増やすことも検討しているそうですが、「ブレークすること、大量に売れることを目指すのではなく、なにより地元の人に愛着をもってもらえる商品に育てていきたい」という株式会社マルヌシの思いはブレません。「全種類制覇した、手土産に重宝している、といったお客様の声を聞くと、目指すものになってきたかなぁとうれしい反面、買ってくださる方の期待を裏切ることのないよう、良いサバが確保できるか毎年ひやひやしています」という開発担当者の言葉からも「八戸のおいしいもの」を作り続けるという気概が伝わってきました。
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